アーカイブス「温故知新」


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夕日が濃厚に染まる山並み。段々畑が広がる里山の風景。家族が集う祭りの門出。親から子に受け継ぐ美しき伝統の形。
自然への畏敬や美意識を育んでくれた世界遺産や名刹。etc.
豊かな風土に息づく祭や行事、自然と共存する匠の美を撮影し、アーカイブスの制作を推奨します。
そして、写真展や出版、メディア等を通じて、その魅力と真価を広く伝え、未来に伝承していくために様々なプロジェクトを推進いたします。

祇園祭 山鉾巡行(7月17日)|鞍馬の火祭り(10月22日)|奈良公園 浮見堂(9月中秋の名月)

「美しくも儚い憧憬」・・・

日本の原風景を未来に留めたい。

四季折々にうつろう季節と自然美。豊かな風土には含まれた暮らしの文化。そして日本には、地域ならではの伝統を受け継ぐ祭りがあります。雪深い中で行われる神事、神輿がかつぎ出される春の大祭、素朴で懐かしい秋祭りなど、実に多彩な祭りが全国各地に伝承しています。
時代を超えて受け継がれてきた祭りには、時の流れとともに形を変えてきたものもありますが、祭りの精神は、受け継がれていく人々の暮らしに生き続けているのです。
記憶に刻まれた祭りの景色をたぐるとき、ハレの祭りを担う人々の生き生きした笑顔が思い出され、弾けるかけ声が心にこだまします。
私たちは、永久にその精神が受け継がれていくことを願い、その一瞬の美を写真に留め、伝統文化の美と心を伝えていきたいと思います。

 

 

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井浦新が「日本の美」をテーマに各地で撮影した作品を、 産経新聞と産経EXで連載しました。
プロジェクト名:日本遊行 美の逍遥
掲載媒体:産経新聞(月1回)、産経EX(月2回)
連載期間:2013年10月~2014年3月

其の一「匠の美 木地師の技(山中漆器・石川県)」

工房で佐竹さんの仕事を見せていただいた。木を読み、木と語らい、木目などの表情を見て、どう削りだしたらその木を最大限に生かせるのかを手で触れながら探っていく。日常 生活の中に木があふれていた時代は、山中でも多くの木地師が活躍していた。しかし「早く作って、安く売る」の製品づくりが主流の現在、その数は少数名。市場にはメイドイン ジャパンと言い難いものが多くでまわっている。「挑戦することが大切だ」と佐竹さんは言う。木地師として何を残していくのか。切り開いていくのかを考えると、生き残る為にはチャレンジし続けるしかない。歩みを止めない人がいなければ技術も伝統もそこで終わってしまう。伝統を背負いつつ前へ進む、それが現代の職人の姿なのだと感じた。
(産経新聞「日本遊行−美の逍遥」から)

「匠の美 木地師の技(山中漆器・石川県)
「匠の美 木地師の技(山中漆器・石川県)

 

 

其の二「匠の美 山鹿風土記(山鹿・熊本県)」

山鹿は時間の蓄積が濃厚な場所だ。興味に導かれるままに歩けば、風情ある温泉宿場町、 チブサン古墳などの装飾古墳群、不動岩などの巨石、灯籠や番傘づくりを含め、1500 年以 上の文化が層として積み重なっているのを感じる。この地域の子どもたちは、発表会や朗 読会など、機会あるごとに誰もが八千代座の舞台に立ち、芸能文化を体の奥底に蓄えて育つ。芸能に関わる自分にとって、その環境は羨ましく、また未来への可能性だとも思える。 積層する時間、それを想う人々の心、それらの総体を「風土」と呼ぶならば、「風土」は人 が育むものであり、同時に人は「風土」に育まれる存在であることに気づかされる。
(産経新聞「日本遊行-美の逍遥」から)

「匠の美 山鹿風土記(山鹿・熊本県)」
「匠の美 山鹿風土記(山鹿・熊本県)」

 

 

其の三「鞍馬の火祭が育むもの(鞍馬・京都府)」

静かな山あいの集落が、「鞍馬の火祭」の一夜だけ、すさまじい炎と煙に包まれる。この熱気と興奮の中に立つのが僕の長年の夢だった。鞍馬では住民総出で準備をし、祭の日を迎える。燃えさかる松明からは火の粉が飛び、その炎の熱さにカメラが壊れるかと思ったくらいだ。しかし僕の興味は炎から、それらが映し出す人々の姿や表情へと移っていった。 どんな家族と暮らし、仲間と何を語っているのか。その瞬間を写真に撮りたいという衝動に駆られた。人一人の輪郭に、家族や仲間たちの輪郭が重なる。伝え合い、助け合い、ともに「祭」をつくる。その瞬間がある方が、生きている時間が濃くなる。濃厚な時間の蓄積。「鞍馬の火祭」が連綿と育んできたものの大きさに言葉を失った。
(産経新聞「日本遊行-美の逍遥」から)

「鞍馬の火祭が育むもの(鞍馬・京都府)
「鞍馬の火祭が育むもの(鞍馬・京都府)